Particle-PLUS コラム - プラズマモデリング(連載)

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はじめにIntroduction

低温プラズマは,スマートフォンなどの身近な製品から科学の最先端を行く素粒子探索実験施設まで, ありとあらゆる場面で欠かせない工業技術として世界中で幅広く利用されています. しかしながら,産業機械や実験室内部で起きるプラズマ現象は, 古典力学・電磁気学・熱統計力学・量子力学・化学等々の影響が極めて複雑に絡み合って実現するものであり, その完全な理解(=定式化)は現時点では実質不可能と言えるでしょう. それにもかかわらず,半世紀以上昔から研究者たちはプラズマをモデル化するという難題に果敢に挑戦し, 着目したプラズマの特性を明らかにするという点において今日までに輝かしい実績が培われてきました. 近年では計算機リソースも発達し,スーパーコンピュータに限らず 会社や研究室の足元に置いてあるようなワークステーションにおいてすら 実際の装置相当のプラズマシミュレーションが行えるようになってきました.




スマートフォン 粒子加速器

▲ スマートフォン内部の半導体チップやディスプレイの製造工程では低温プラズマによるスパッタリングやエッチングといった技術が使われています. また,CERNの加速器ビームラインでも低温プラズマを使ったコーティング技術が必要不可欠です.
[ " Social Media App Icons On The Screen of A Smartphone ", mikemacmarketing, CC BY 2.0; " The Large Hadron Collider/ATLAS at CERN ", Image Editor, CC BY 2.0. ]




ウェーブフロントでは「粒子法」でプラズマをモデル化したシミュレーションソフトウェア『Particle-PLUS』や 「流体法」のプラズマシミュレーションソフトウェア『VizGlow』を取り扱っており, これらを適宜使い分けながら皆様方へ長年ソリューションを提供しております. 粒子法と流体法,どちらの手法も一長一短ありどちらの方が優れているというわけではありません. 弊社では必要に応じて各計算手法の特徴をお客様方へ説明させていただき, どちらの手法を使うのが望ましいかを納得していただいたうえでソフトウェアをご利用いただいておりましたが, ここで一度基本に立ち戻ってそれぞれの手法の定式化の流れを再度見直すこともまた 皆様のお役に立つ何かがあるのではないかと考え,本コラムを書き始めました.


本コラムは,「プラズマシミュレーションに興味はあるけど理論的背景をよく知らない(知っておきたい)」 「CAEには流体法ソフトウェアとか粒子法ソフトウェアとかあるけど今後のためにそれらの違いを明確にしておきたい」 といった思いをお持ちの方に特に役に立つ内容にできればと考えております. 取り扱う題材はプラズマとシミュレーションという初学者にはとっつきにくい内容ですが, 本コラムは式変形の流れを含めてできる限り丁寧に書きたいと思います. しかしながら,一から十まで説明を加えると長くなりすぎてしまいますので,

  • 大学学部生レベルの物理学の知識(力学・電磁気学・熱統計力学・量子力学の基本柱)
  • 初学者レベルの数値計算の知識(「離散化」や「差分」の意味が分かるくらい)
  • 「低温プラズマ」の特徴
については本コラムでは説明を省略させていただきますのでご了承ください.


本コラムが少しでも皆様の業務の助けになりましたら幸いです.

粒子法編Particle Modeling

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参考資料Reference

本コラムの作成にあたり,以下の資料を参考にさせていただきました. (たまたま身近にあった参考書が以下というだけで,他にも多くの同質の内容の参考書があるかと思います.)

  • Francis F. Chen 著,内田岱二郎 訳:プラズマ物理入門(丸善,1977)
  • Michael A. Lieberman,Allan J. Lichtenberg 著,堀勝監修,佐藤久明 訳:プラズマ/プロセスの原理 第2版(丸善,2010)
  • N. G. Van Kampen,B. U. Felderhof 著,西田稔 訳:現代基礎物理学選書 プラズマ物理学(紀伊國屋書店,1973)
  • 電気学会 編:電気学会大学講座 プラズマ工学(オーム社,1997)
  • 高村秀一 著:プラズマ理工学入門(森北出版,1997)
  • 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 編:大気圧プラズマ 基礎と応用(オーム社,2009)
  • 日本機械学会 編:原子・分子の流れ 希薄気体力学とその応用(共立出版,1996)
  • 日本機械学会 編:コンピュータアナリシスシリーズ7 原子・分子モデルを用いる数値シミュレーション(コロナ社,1996)

著者プロフィール
  上野 崚一郎 | 博士(理学)
1991年 広島県生まれ
2019年 ウェーブフロント入社
2019年 広島大学大学院理学研究科 博士後期課程修了

学生時代は数値シミュレーションを使った素粒子論(格子ゲージ理論)の研究に従事. 入社後は,専門職(エンジニア)としてプラズマ解析ソフトウェアの開発をはじめとして, 解析コンサルティング業務や国内外のユーザー向けの技術サポート・トレーニングなどを担当.

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