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第10回:システム(系や系統)の評価とCMMS/EAMによる管理

第9回から引き続き、RCMをメンテナンス業務へ適用する方法について考えます。 今回のメルマガでは、サンプルを提示しながら以下について説明します。

  • RCM適用時の問題点と対策
  • RCM実施のための留意事項と信頼性情報
  • システムレベルでの信頼度及び稼働率の評価と保全戦略の策定
  • CMMS/EAMによる管理における留意点
2014-09-01

1.信頼性中心保全(RCM:Reliability Centered Maintenance)

第9回のメルマガでは、信頼性中心保全(RCM)とCMMS/EAMの関係を示しました。

前稿では、着目するコンポーネントの機能と機能喪失を定義し、 その故障モード(または原因)を列挙した後、各故障モードに対する対策を検討する方式を説明しました。 本方式は、信頼性中心保全(RCM)と呼ばれ、FMEAやFMECAをベースにした考え方です。
RCMでは、コンポーネントや機能の列挙、故障モードの列挙を全て実施し、 故障モードによる影響やリスクを排除または許容できるレベルに抑えるための 対策の検討や評価を行い、保全方式や戦略を決定します。

2.RCM適用時の問題点と対策

ところが、ここで、問題が発生します。

特に、すでにプラントが稼働している場合、 「実際には、RCMの様な評価を行わなくても、プラントは、正常に稼働しています。 効率は悪いかもしれませんが…」という疑問も発生します。

以上の様な「RCMをゼロベースで実施するためには、 大量のリソースが必要」に対する処置として、最近では、RCMのエッセンスを残しつつ、 検討・評価の労力を軽減する手法も提唱されています。

問題点の対策のひとつとして、CMMS/EAMとRCMを連携した運用を行うことが考えられます。 CMMS/EAMとRCMの連携により、以下の効果が期待できます。

但し、CMMS/EAMとRCMを連携して用いるためには、設備台帳の粒度や故障情報の内容について違いを留意する必要があります。

本メルマガでは、CMMS/EAMとRCMを連携して用いることを考えるために、 RCMのベースとなっている信頼性情報や信頼性評価の解説も交え、以下を説明します。

3.RCM実施のための留意事項と信頼性情報

RCMを適用する当たり、どこに対して適用するのか、 そして選択した対象の信頼度は、どうあるべきなのかを考える必要があります。 どうあるべきかを考えるためには、故障とは何か。 故障するとシステムはどうなるのかを考える必要があります。 RCMのベースとなっている信頼性評価の世界では、これらを定量的に扱うために、 故障率、信頼度(不信頼度)、稼働率(不稼働率)を用います。

特に、故障率と信頼度の関係は重要です。 プラントや機器の設計段階でも信頼度を評価するために故障率を用いますが、 この場合、通常は、平均値を用います。 これに対して、保全の世界では、故障率の平均値を用いても、 最適な計画を策定することはできません。 故障率は、時間に依存します。 とくに摩耗故障を起こす機器の場合、時間とともに、信頼度は加速度的に悪くなります。 ということは、故障率の特性(機器の壊れ方・癖)を知る必要があります。

故障率と信頼性情報の関係は、以下ページを参照して下さい。

「故障率と信頼性情報の関係」・・・(A)

参照(A)の説明の中で示した様に、ある機器の故障数(頻度)が判れば、 故障率、信頼度(不信頼度)の一式が判ります。 通常は、機器仕様(機種)、環境、そして、使用頻度などが同じと見なせる機器の 故障情報を集めて集計することで、故障率や他の信頼性情報を計算します。 もし、故障情報が入手できる場合は、集計の方法として、ワイブル分析が良く使われます。

ワイブル分析の説明は、このページを参照して下さい。

「ワイブル分析を用いた故障分析」・・・(B)

参照(B)で示したように、ワイブル分析は、時間依存の不信頼度(故障率)を故障情報から近似することができます。 また、ワイブル分析では、故障情報が存在しない場合に対する方法も提案されています。 これに対して、FMEA/FMECA(※1)のみを用いる場合、故障モードに対するリスクの評価は、RPN(※2)のみを用いるため、 影響度や致命度は、判りますが、いつ不信頼度が増加するのかが判りません。 このことは、FMEA/FMECAのみの場合、リスク(RPN)は、判るが、保全周期の決定には困難を伴うことを意味します。 なお、リスク(RPN)が高い場合は、リスクを排除すために実施すべきこと(戦略)を検討する必要があります。 この戦略の中で出てきた保全項目をどれ位の頻度で実施すれば良いかを検討するために ワイブル分析結果等の故障分析結果が活用できます。


※1 FME(C)A:故障モードと影響(及び致命度)分析
※2 RPN:リスクプライオリティナンバー
   リスクを致命度x頻度x検知のし易さとして評価した値であり、時間依存性はない。

4.システムレベルでの信頼度及び稼働率の評価と保全戦略の策定

次に、機器の故障がシステムに与える影響を考えます。 機器の癖(故障率)が判ったとして、これらの機器を組み合わせて構成されたシステムの不信頼度(故障率)を 知ることで、システムの特性を知ることが出来ます。 システムの故障に対する特性は、信頼度を評価することで推定できます。 システムの信頼度を知る方法には、RBD(※3)やFTA(※4)が存在します。

※3 RBD:Reliability Block Diagram(信頼性ブロック図)
※4 FTA:Fault Tree Analysis(フォルトツリー分析)

システムに対する信頼性評価の例として、簡単なシステムを例にRBDを用いた 評価を示します。システムに対する信頼性評価の例は、以下を参照して下さい。

「システムに対する信頼性評価の例」・・・(C)

システムの信頼度を向上させるための手段としては、不信頼度(故障率)の成長を考慮して、 保全計画を立てることになります。

システムを構成する機器の不信頼度が判っていれば、 機器ごとに何回に1回の頻度で保全を実施すれば良いか等の目安も立てられます (B-Life指標値の活用:「故障率と信頼性情報の関係」を参照)。

故障率に摩耗故障領域が存在する場合は、 「不信頼度が急激に成長する前に定期的に更新工事を実施する」などの 計画が有効になります(TBM※5)。

また、環境や使用頻度が変わる場合もあるため、 定期的な検査を実施し、機器の健全性を考慮した上での更新計画策定も必要でしょう(RBIやRBM※6)。

故障率が偶発故障のみの場合は、検査やモニタリングが有効な手段となります(CBM※7)。


※5 TBM:Time Based Maintenance(時間基準保全)
※6 RBI(M):Risk Based Inspection(Maintenance)(リスク基準検査(保全))
※7 CBM:Condition Based Maintenance(状態基準保全)

上記に基づき保全方式を検討した後、 保全の効果を推定する場合には、ライフタイム全般にわたる稼働率を考える必要があります。 稼働率は、信頼度に保全計画を含めることで、推定できます。 信頼性評価の世界で考えると、保全を実施するということは、成長した不信頼度をリセット(※8)することを意味しています。


※8 厳密には、完全にリセットできるのか、50%程度をリセットできるのかなどを考慮する必要があります。

以下に、信頼性評価に保全計画を組み合わせた場合の稼働率推定の例を示します。 稼働率推定の例は、以下を参照して下さい。

「システムに対する信頼性評価の例」・・・(D)

5.CMMS/EAMによる管理における留意点

前節では、不信頼度(故障率)を用いたシステムの信頼度や稼働率の推定例 を示しました。では、前節の様な信頼性評価を踏まえた上で RCMを適用していくためには、 CMMS/EAMでどの様な管理を行えば良いでしょうか。 以下に留意点を列挙します。

6.最後に

今回のメルマガでは、RCMと保全周期の評価、それを実施するためのCMMS/EAMでの留意点について検討しました。 広範囲の内容を1回のメルマガでまとめたため、判りにくい点もあると思います。 本稿で述べた内容については、定期的に無料セミナーを開催していますので、こちらもご活用ください。


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