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第7回:保全管理業務のシステム化の順序と考慮すべき点

第7回:保全管理業務のシステム化の順序と考慮すべき点

メールマガジン第2号『企業内での保全プログラム(スキーム)の進展順序』にて、企業の中での保全業務の進展順序を示しました。今回の内容は、保全業務を支援するためにシステム化を実施する場合、どの様な手順で実施するか、考慮すべき点は、何かを考察します。
2009-06-12

1.システム化の順序

企業により保全プログラムの進展状況のどの位置にいるのか、どの様な管理方式を目指すのかは異なりますが、メールマガジン第2号 『企業内での保全プログラム (スキーム) の進展順序』にて、一般化して説明しました。

企業内で保全プログラムを構築し、業務を支援することを目的にコンピューター・システムを利用する(以後システム化と略す)場合、以下のとおり区分することができます。

表1 保全プログラムの進展順序とシステム化区分
区分 保全プログラムの進展順序
システム導入 1. 予防保全 (PM)
2. 在庫 (予備品) と調達
3. Work Order システム
4. 保全管理システム (CMMS)
システム運用 5. 技術検討会や教育
6. オペレーション部門の包含
7. 予知保全 (PdM)
8. 信頼性中心保全 (RCM)
9. 全員参加型保全 (TMP)
10. 統計的手法による財務最適化
11. 改善の継続


保全プログラムの進展順序については、メールマガジン第2号をご参照下さい。


保全プログラムのインフラ
  『1.予防保全』から『4.保全管理システム』までは、保全業務をシステム化する上で、殆どの企業が意識する内容です。 言い換えると、保全管理プログラムを遂行するためのインフラと言えます。
蓄積された情報の活用
  これに対して、 『5.技術検討会や教育』 から 『11.改善の継続』 は、保全プログラムをシステム化する企業が何を目指すかにより異なります。設備や装置を最適な状態にするために、保全情報をどの様に活用するか、または、どの様に運用し、情報を収集していくかに主眼がおかれ、システム化後に蓄積される情報により、その成否が影響されます。
具体的には、
  予防保全は、メンテナンス業務の基本です。 法令点検やベンダー基準、自主点検等の定期的に実施する作業、週次や月次で日常的に実施している作業、意識的に壊れてから対処( RTF:Run To Failure:重要度が低く、方針として壊れてから対処する )が管理されていることが前提となります。
  状態ベース保全(CBM)や予知保全(PdM)は、予防保全で実施される時間ベースの繰り返し保全のコスト削減や状態把握の精度向上、処置の品質向上(正しい処置を正しい時期に)を目指して実施されます。 これらの方式は、予防保全を評価した結果として(最適化していく過程で)、採用する方式といえますが、実際には、過去の経験や実績、保全にかかる費用、設計情報やメカニズムに関わる情報等が存在し、予防保全との比較検討ができる場合、これらを加味して決定します。 また、企業の中では、設備毎に管理状況が変わります。 例えば、生産設備は、上記の説明を加味して既に管理しているが、ユーティリティ設備は、これから検討の様に、どの設備を対象にするかによっても保全プログラムのレベルが異なります。
まとめ
以上をまとめると、保全プログラムをシステム化したいと考える企業は、設備毎に達成したい目標を定め、これを管理・監視するための情報を列挙する必要があると言えます。 これらをまとめた、システム計画書や、システム化の検討を進める上で必要となる要求仕様の作成が重要になります。

2.システム化の手順

システム化の手順は、以下のとおりとなります。

注)[1] 殆どの設備保全管理システムベンダーが提供するソフトウェアには、業務のモデルが組み込まれています。 企業でやりたいことを明確にしておくことで、フィット・ギャップが明確にでき、システム化範囲、カスタマイズ範囲を明確にすることが可能になります。

システム化作業および運用のフローを以下に示します。

システム化作業および運用フロー

図1  システム化作業および運用フロー

保全業務をシステム化する場合、設備情報と業務情報(業務フロー)の両面から検討する必要があります。 設備情報は、実装する保全形態、作業形態で設備階層の表現や粒度が異なります。 故障を数値的に管理したい場合は、部位まで表現されると集計が簡単になります。 工事の発注やその状況を扱いたい場合は、発注単位で設備が識別できる必要があります。 設備の保全履歴と工事の両方を管理したい場合は、作業を個別に扱う機能の他に一括して扱う機能が必要になります。 図1中の設備情報整備は、現行の保全方式の見直しに繋がります。 図1の『設備台帳整備』と『計画保全整備』は、保全方式、過去の履歴の見直しを行うことそのものです。 例を図2に示します。

保全プログラムの構築

図2  保全プログラムの構築

業務情報整備では、業務フローに基づく書類の流れ、決裁権限をシステム化します。 実際の業務では、図2で示した保全形態の他に、オペレーターからの作業依頼やアウトソースを利用する場合もあり、承認行為をシステム化しておく必要があります。 また、設備の保全履歴を残すためにも、これらの作業記録を設備と関連付けて残す必要があります。

3.まとめ

本稿では、保全管理業務をシステム化する場合の手順を示しました(図1参照)。
システム化では、設備情報管理の観点、業務支援の観点の両面から考える必要があります。 導入検討時は、設備情報、保全形態、業務フローの見直しを含んだ上で、システム化作業が実施されます。 よって、システム化を検討、導入する企業は、明確に、導入時のメリット・デメリット、導入後のイメージを持ち、検討を進める必要があります。