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第4回:業務システム化における履歴管理と作業管理の矛盾点
保全管理システムの販売・導入の際に、製品の持つ機能とユーザーの要求する仕様のギャップが問題となる場合がよくあります。 特に困難なのは、異なる情報をひとつのデータベースで管理したいという要求が発生する場合です。 例えば、ユーザーが求める要望には次のようなものがあります。
至極当たり前の様な要求ですが、このような異なる要求を一つの製品ですべてカバーするのは難しいため、これを実現するためには工夫が必要です。
図1: 一つの製品で両方の要件をシステム化することは大変である
今回のメールマガジンでは、設備の履歴管理とメンテナンスに係わる作業管理の観点から、問題点を考察し、その問題を解決するために必要となるシステム要件について解説します。
「設備の履歴管理を行いたい」場合と「設備に対する作業を管理したい」場合とで、設備保全管理システムは、随分と変わったものになってしまいます。
設備のメンテナンス等の履歴を管理したい場合は、設備や装置、機器や部位 (保全部位や検査部位) の様に設備階層を意識して故障や故障対応、部品交換およびメンテナンスに関する情報を蓄積していきます。
これに対して、検査や工事を外部に委託または発注する場合、発注単位で作業をまとめる必要があります。この発注単位の明細が、設備階層どおりであれば問題ないのですが、殆どは異なったものになります。コストの管理を実施したい場合、さらに困ったことが発生します。例えば、「回転機一式(N台)の検査 XX円、付帯工事 YY円、出精値引き △円」で実施した作業について、各回転機の実績コストを入力したい場合、費用按分方法について何らかのルールを決めるなどしないと入力ができません。そもそも、「この様な場合、コスト情報を入力することに意味があるのか、有効活用できるのか」から検討する必要があります。下図2にその様子を示します。
図2:それぞれの管理方法における設計の例
上記の様な問題が発生する最も大きな原因のひとつに、情報の粒度の違いがあげられます。工事や作業の発注単位と履歴管理部位にギャップが存在するため問題が発生します。履歴管理に重点を置く場合と作業管理に重点を置く場合の比較を、以下に示します。
台帳/他 | 作業管理 | 履歴管理 |
---|---|---|
設備台帳 |
|
|
予備品台帳 (部品台帳) |
|
|
作業管理 イベント管理 |
作業を明細レベルで分離、集約する機能が必要性がある。付帯工事等、設備台帳に関連付けられない作業も発生する。 | 作業レコードと設備レコードの関係が明確。故障を設備のイベントとして記録する場合と作業と紐付けて記録する場合の2方式が考えられる。 |
コスト管理 | 勘定科目と対応付けられる。コストセンターを定義することで、予実管理が可能。設備を作業グループ単位でグループ化することで、暗黙にコストセンターを意識。 | あくまで目安。実績コストの設備への関連付けは困難。 |
前節で述べた問題を解決するためには、保全管理システムを導入する時に、何を管理するかを明確にしておく必要があります。特に設備のメンテナンス履歴を管理したいのか、それとも、作業を管理したいのかは、最も重要な選択肢になります。
管理対象 | 台帳/他 | 留意点 |
---|---|---|
作業管理 | 設備台帳 |
|
予備品 (部品) 台帳 |
|
|
作業 (イベント) 管理 |
|
|
コスト管理 |
|
|
履歴管理 | 設備台帳 |
|
予備品 (部品) 管理 |
|
|
作業 (イベント) 管理 |
|
|
コスト管理 |
|
上記の要望を保全管理システムにて実現する場合、履歴管理と作業管理を同一の仕組みで考えると、何れの機能も実現することが困難になります。発注を伴う作業や作業グループを意識する場合、履歴管理とは、別の観点 (切り口) から作業のグループ化を行う必要があります。この様子を以下に示します。
履歴管理と作業管理を実施する中で、発注や作業グループを意識する場合、作業のグループ化機能が必要になります。保全管理システムには、作業を分割、集約できる機能や一括発注機能を持ったものもあります。上図では、作業のグループ化を積算機能として表現しています。もし、作業を分割、集約できる機能や一括発注機能を持たない場合でも、履歴の管理と作業の管理は、分けて検討し、足りない方を追加すべきと考えます。
保全管理システムの中には、購買機能を有するものも存在します。この場合、発注や見積依頼の仕組みとして、計画された作業の分割や集約、および一括発注の仕組みを有しているかを検討する必要があります。
前節までの説明の内容をまとめると、設備の履歴管理と作業管理を実施する場合、必要となる保全管理システムは、以下の機能を持つ必要があります。
情報の一元管理の観点から、項目2.の情報は、項目3.に包含されることが望ましく、日常保全や自社内で実施する作業は、項目2.の情報として単独で蓄積できる必要があります。
設備のメンテナンス履歴管理と作業の発注管理は、同一情報の管理の様に見えますが、保全システムの中では、設備台帳、作業管理情報の粒度の違いとして現れます。この二つの情報は、保全管理システムの根幹を成す情報であるため、まず、最初に解決すべき問題です。
保全管理システムを選定・導入するにあたり検討すべきガイドラインについて、毎回、テーマを設けて解説します。
前半では近年における各種保全管理システムの現状と動向、 後半では実際の業務にあたっての管理方法との関係に焦点を当てて執筆していく予定です。
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