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Thermal Desktopのオプション・モジュールであり、形態係数、及び、放射コンダクタンスを算出します。
RadCADの主要な機能として、モンテカルロ・レイトレーシング法(Monte Carlo Ray Tracing Method)が挙げられます(以後、MCRT法とも書きます)。これは、放射コンダクタンスを数値的に予測する手法です。MCRT法は、1970 年台から広がりをみせ、特にNASAにおいては、1980年台より重点的に開発に注力されました。この頃、MCRT法は、(放射伝熱のみではなく)グラフィックの分野でも研究が行われていました。当時の数学者は、高速にMCRT法を実施する方法を活発に研究・開発しました(その中で生まれた方法の一つが、Oct Cellと呼ばれる手法です)。
1980年台半ばには、NASAとC&R社は、“Oct Cellを活用したMCRT法開発 (放射伝熱向け)” の契約を交わします。この契約によりC&R社において開発が開始され、現在のRadCADに至っています。
RadCADは、Thermal Desktopのオプション・モジュールであり、SINDA/FLUINTの入力となる形態係数や輻射変換係数を求めます。
MCRT法は、放射の実事象を(直接的に)モデル化したものであると言えます: 放射エネルギーを輸送する光波(light wave)を光線(Ray: 三次元グラフィックスにおいて直進する光線)としてモデル化します。多数の光線が、光波と同様な事象(拡散を考慮した反射/屈折を考慮した透過)を模擬しながら、サーフェス間のエネルギーの受け渡し(の割合)について、算出していきます。このような確率的なサンプリングを繰り返しながら、エネルギー移動量(の割合)の算出・更新を繰り返します。より多くのサンプルを用意 (orより多くの光線を射出)するほど、より高い精度(accuracy)の数値予測が期待できます。
下図のような向かい合う2つの円板の形態係数は、次式のように書けます(日本機械学会, 伝熱工学 (2005) など)。
ここで、次のような比較を試みます: r1=0.5、r2=0.25とし、hをパラメータ(h=0.1...1.0)とします。この条件にて、上式で算出した形態係数F12、及び、RadCAD MCRT法で算出したF12の比較を試みます。
本比較では、各サーフェスにつき10万の光線を射出することとします。各ケースの計算は、数秒で終了します(Windows Vista 64bit, Intel Core2 Duo 3.0GHz 2コア, 4.0GB RAM)。結果は、次の表・グラフのようになり、両者は、良い一致を示していることがわかります。
h [m] | F12 (理論式) | F12 (RadCAD) |
0.1 | 0.23754 | 0.23718 |
0.2 | 0.20798 | 0.20772 |
0.3 | 0.17411 | 0.17456 |
0.4 | 0.14311 | 0.14351 |
0.5 | 0.11722 | 0.11724 |
0.6 | 0.09639 | 0.09679 |
0.7 | 0.07987 | 0.07989 |
0.8 | 0.06679 | 0.06669 |
0.9 | 0.05639 | 0.05638 |
1.0 | 0.04806 | 0.04807 |
次に、下図のような向かい合う2つの長方形の形態係数について、同様の比較を試みます。形態係数の理論式は次式のように書けます。
ここで、a=1.0、b=0.5とし、cをパラメータ(c=0.1...1.0)とします。上式より算出した形態係数 F12、及び、RadCADのMCRT法で算出したF12を比較すると、次の表・グラフのようになります。両者は、良い一致を示していることがわかります。
c [m] | F12 (理論式) | F12 (RadCAD) |
0.1 | 0.75363 | 0.75477 |
0.2 | 0.57795 | 0.57851 |
0.3 | 0.44999 | 0.45055 |
0.4 | 0.35589 | 0.35612 |
0.5 | 0.28588 | 0.28513 |
0.6 | 0.23305 | 0.23253 |
0.7 | 0.19261 | 0.19251 |
0.8 | 0.16118 | 0.16076 |
0.9 | 0.13642 | 0.13706 |
1.0 | 0.11665 | 0.11657 |
上記の形態係数Fijでは、輻射熱の反射、及び、透過は考慮していません。RadCADのMCRT法では、形態係数Fijに加え、Gebhartの吸収係数の算出機能も提供します: 各光線について、面上での反射、及び、透過を模擬し、Gebhartの吸収係数Bijを算出します。
$B_{ij}=\frac{面_{j}に吸収されるエネルギー(Energy\;Absorbed\;by\;j)}{面_{i}が放出するエネルギー(Energy\;Emitted\;by\;i)}$反射、及び、透過を考慮した "車両への直達日射量算出例" を以下に掲載します: MCRT法実施の様子(上)、及び、直達日射量のコンター図(下)です。下記例の詳細については、PDF文書をご覧になれます