本記事では、乾式混合・湿式混合で起こる品質課題を、離散要素法(DEM:Discrete Element Method)という解析手法を用いた粉体解析、及び流体解析との連成解析で可視化し、設計改善につなげるための考え方を解説します。
粉体の混合過程で起こりやすい課題
粉体の混合過程では、リボンミキサー、パドルミキサー、パムアペックスミキサー(プロシェアミキサー)、V型混合機、ドラムミキサーなど、さまざまな混合機が使用されます。 装置内で粉体が流れているように見えても、実際には局所的な滞留や成分の偏りが残り、均一な混合に至っていない場合があります。
代表的な課題は次のとおりです。
- 粉体混合後に成分ムラが残留
- 粒径差や密度差によって偏析が発生
- 湿式混合でダマや凝集体が形成
- 液体添加後に壁面やブレードへの付着が増加
- 試作機では問題がなかった条件でも、スケールアップ後に混合不良が発生
これらの課題を解決するには、混合度といったマクロな結果だけでなく、混合機内部で粒子や液体がどのような分布になっているかを把握することが重要です。 乾式混合では、DEMを用いて粒子の流れ、偏析、デッドゾーン、混合度を評価できます。 湿式混合では、DEM-CFD連成解析(DEM-CFD連成とは?)を用いて液体の分布、ダマ、壁面付着が発生しやすい領域を可視化できます。
乾式混合と湿式混合で評価すべきポイント
混合ムラの原因は、単に混合時間が短いことだけではありません。 粉体は、粒径、密度、形状、摩擦、付着性、流動性などの違いにより、装置内で複雑な挙動を示します。 乾式混合では、粒子が十分に入れ替わらない領域が存在すると成分ムラが残ります。 粒径や密度が異なる粉体を混合する場合は、混合中だけでなく排出時にも偏析が発生することがあります。 一方、湿式混合では、粉体の動きに加えて液体の分布が品質を左右し、例えば過湿が生じるとダマ・凝集体、壁面付着の原因になります。 そのため、粉体の混合状態と液体の分布の均一性を分けて評価することが重要です。
| 混合方式 | 評価ポイント |
|---|---|
| 乾式混合 | 粒子の循環、混合度、偏析、デッドゾーン |
| 湿式混合 | 粒子分布、液体分布、ダマ・凝集体、壁面付着、トルクの増加 |
粉体が活発に動いているように見える場合でも、内部には混合ムラや液体の偏りが生じていることがあります。
乾式混合におけるDEMシミュレーションの活用
乾式混合では、DEMを用いることで粒子一つひとつの挙動を解析できます。これにより、混合機内で粒子がどの経路を通って循環し、どの領域で滞留しやすいかを把握できるようになります。
| DEMで可視化できる項目 | 改善に役立つポイント |
|---|---|
| 粒子の軌跡 | 装置全体を粉体が十分に循環しているか |
| 速度分布 | 動きが速い領域・遅い領域の把握 |
| デッドゾーン | 混ざりにくい場所の特定 |
| 混合度 | 均一化の度合いを評価 |
| 偏析 | 粒径差・密度差による不均一傾向の確認 |
| 排出時の粒子流れ | 排出時に偏りが生じていないか |
| ブレードのトルク | 装置負荷や消費電力の評価 |
DEMを活用することで、混合の時間、回転数、ブレード形状、充填率などの条件が混合度に与える影響を比較できます。 実機の試験では観察しにくい内部挙動を可視化できるため、混合が不十分となる原因の特定や運転条件の検討に有効です。
湿式混合におけるDEM-CFD連成シミュレーションの活用
湿式混合では粉体に液体を添加するため、粒子の動きだけでなく、液体がどのように広がるかも品質に大きく影響します。 添加する条件が適切でない場合、局所的な過湿や付着が発生し、混合度合いや排出性能が低下します。
液体の添加を伴う工程では、次のようなトラブルが起こりやすくなります。
- 一部の領域だけ過度に濡れる
- ダマや凝集体が形成される
- 液体が壁面やブレードに付着する
- 材料の粘度が増加し、流動性が低下する
- ブレードトルクや消費電力が増加する
- 排出後に湿った材料が残留する
DEM-CFD連成シミュレーションでは、粉体と流体の挙動を連成して解析します。 なお、ThreeParticle/CAEでは、メッシュレス流体解析手法であるSPH法(SPH:Smoothed Particle Hydrodynamics)を実装しています。 これにより、液体の広がり方、過湿された領域、壁面に付着が発生しやすい領域などを評価できます。
| DEM-CFD連成で可視化できる項目 | 改善に役立つポイント |
|---|---|
| 液体が最初に付着する位置 | ノズル位置・角度の検討 |
| 液体の広がり方 | 均一化に要する時間の評価 |
| 過湿された領域 | ダマ・凝集体の低減方法の検討 |
| 壁面に付着しやすい領域 | 排出時の残留の低減 |
| 液体の添加タイミング | 効率的な分散条件の検討 |
| トルク変化 | モーター負荷 |
湿式混合では、粉体が十分に動いていても、液体は均一に分散していない場合があります。粉体の混合度と液体分布の均一性を別々に評価することで、ダマ・凝集体、壁面付着の発生要因をより具体的に把握できます。
スケールアップ検討でシミュレーションが有効な理由
粉体混合では、試験機で得られた良好な結果が、そのまま実機スケールで再現できるとは限りません。 装置寸法、回転数、充填率、ブレード形状、排出方法が変わると、粒子の循環経路や滞留する領域も変化します。 そこで、DEMシミュレーションやDEM-CFD連成シミュレーションを活用しますと、試作機や実機スケールでの混合度、偏析の傾向、トルク、液体の分布などをコンピュータ上で比較できるため、試作や実機試験の回数を抑えながら、混合が不十分となる領域が発生しやすい条件を事前に把握することが可能となります。
まとめ:粉体混合の均一化には内部挙動の可視化が重要
粉体混合機で安定した品質を得るには、装置内部で粒子や液体がどのように動いているかを把握することが重要です。 乾式混合では、DEMシミュレーションにより、粒子の循環、偏析、デッドゾーン、混合度などを評価できます。 湿式混合では、DEM-CFD連成シミュレーションにより、粉体・液体の分布、ダマ・凝集体の発生、壁面への付着、トルクを評価できます。
粉体混合の混合ムラに対して、単に「長く混ぜる」「速く回す」だけでは十分ではありません。 混合機の種類、材料特性、時間、回転数、充填率、液体の添加条件、排出方法などを総合的に検討する必要があります。 そこで、DEMやDEM-CFD連成シミュレーションは、粉体混合の内部挙動を詳細に把握することができるため、課題の解決に有効な手段となります。
ThreeParticle/CAEは、DEMやDEM-CFD連成シミュレーションを中心に、粒子の複雑な形状、流体との相互作用、構造解析との連成、機構との連動などを総合的に解析したい方に適しています。 粉体・流体・構造・機構との相互作用を考慮した連成解析を一つの環境で実施できるため、解析条件の設定から計算実行、結果評価まで効率的に進めることが可能です。 粒子と流体が相互作用する複雑な混合現象に対し、実験では把握が難しい内部の流れや粒子分布をThreeParticle/CAEのDEM-CFD連成シミュレーションを用いて解析することで、装置の性能向上やトラブルシューティング、運転条件の最適化に大きく貢献しています。