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概要

ZnO単一層への空孔やY添加が与える特性の変化

半導体ベースの技術として、トランジスタやダイオードなどの半導体素子に加えて、光触媒への用途も注目されています。 半導体光触媒にはTiO2、CdO、ZnOなどがあり、それらは優れた電子的および光学的特性、非毒性、および低コストなどの特徴を持っています。
その中でもZnOは、高い化学的安定性、高いキャリア移動度、大きな励起子結合エネルギーなどの特性を備えているため、特に注目されている高活性半導体光触媒です。
また、半導体ベース光触媒の可視光収集能力を改善する手法として、金属添加がしられています。 例えば、ZnOフィルムへのイットリウムが添加は、フィルムの可視光透過率を低下(可視光の吸収係数が上昇)させる、などがございます。
そのような半導体ベース光触媒について報告しているこちら論文では、計算にMaterials Studioを使用し、ZnOベース半導体のバンド構造やPDOSなどを比較しております。

keyword

  • キャリア移動度:移動度とも呼び、キャリア(電子と正孔)の移動がしやすいかを表す指標です。
  • イットリウム:遷移金属の一つであり、Znと原子半径が近い特徴を持っています。
  • バンド構造:結晶構造において、電子が取ることのできるエネルギー準位の分布を表します。

  • Reference

  • Q. Wu, et al., Materials, 13(3), 4885(2020).

  • 手法

    計算モデルと手法

    ZnO単層膜を基本とした4種類の構造を計算モデルに使用しました。 Znの空孔があるもの、Zn空孔がありかつイットリウム添加されたもの、Oの空孔があるもの、O空孔がありかつイットリウム添加されたものの4種類です。 また、これらのモデルは全てCASTEPモジュールを使用して構造最適化されています。
    これらを見ると、4つすべての構造の空孔周辺において構造の歪みが見られます。 モデルの構造最適化には、周期的境界条件の計算に特化しているCASTEPモジュールを使用しました。

    keyword

  • 周期的境界条件:sin波のような一定間隔の周期を持っている条件です。金属や結晶などの周期性を持つ構造に当てはまります。
  • CASTEP:DFTに基づいた量子力学モジュールです。半導体、金属などの固体材料を計算することが出来ます (データシート参照)
  • 結果

    文献にて求められた物性値と考察

    上の画像は文献にて求められた物性値(左:誘電率 右:吸収曲線)を表しています。
    例えば、吸収曲線のZnO単分子層の黒線のピークは4.0eV付近にあります。 しかし、イットリウムが添加された赤線のY-ZnOにおいては1.2eV付近に新しくピークが形成され、かつ4.0eV付近のピークでは長波長遷移も見られています。
    空孔もピークに影響を及ぼし、イットリウムが添加されかつ酸素空孔があるY-VO-ZnOを表す橙色においては、全体的に吸収係数が高くなっていることがわかります。
    このことから、イットリウム添加と原子空孔は可視領域の吸収係数を高め、光触媒作用としての可能性があると考えられます。

    Reference

  • Q. Wu, et al., Materials, 13(3), 4885(2020).

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